解説・ストーリー
森田芳光監督の映画『ハル』(1996)は、当時としては画期的な手法で描かれたドラマ映画です。ハリウッドで同じように、メールでのやり取りで恋愛を描いた「ユー・ガット・メール」が公開されたのは「ハル」公開から3年後のことです。
学生時代のアメリカンフットボールでの名声を怪我によって失った、ハルを中心に物語は展開します。ハルは怪我から夢を諦め、東京で会社員として単調な生活を送っていた。そんな日々の中で、映画フォーラムのサイトを知理、ハルというニックネームでアクセスをする。
ある日、(ほし)というユーザーと知り合い、二人は意気投合する。お互い素顔を明かさない約束で連絡を取り合ううちに、(ほし)の誠実さからハルは自身の悩み事も聞いてもらうようになる。
(ほし)もまた、人生の悩みを抱えた東北の女性であったが、ハルとのやり取りでは男性を装っていた。そんなやり取りをしている日々が続くうちに、ハルが東北出張に行く機会が訪れる。お互い電車内とホームという距離を取り、目印のハンカチを持ち春をホームで見送る約束をするのだが…。
「ハル」は、当時としてはメールのやり取りでコミニュケーションをとるのは珍しく、字幕で表現する画期的な演出が取られました。斬新な演出にも主演の深津絵里と内野聖陽がしっかりと応え、心温まる瞑想的な映画となっています。シンプルなことに喜びを見出し、ペースの速い世界で大切なつながりを育むことを優しく思い出させてくれます。ハルと(ほし)の物語を通して、リアルな現実の中で思いがけず幸福を見つけることの大切さを振り返るよう誘われます。
観客レビュー
「『ハル』は公開当時(1996年)としては画期的で瞑想的な映画ですね。繊細な演技と美しい映画撮影が、感動的なストーリーに引き込んでくれる傑作です!」
「『ハル』は静かに人間との関わりを表現した作品です。メールという抑制された手段と静かな瞬間が登場人物の熱演によって感情的な魂を揺さぶる映画にしています。」
「『ハル』は、今の社会での人との関わりを優しく表現してくれている映画です。深津さんの心のこもった演技と、ハルとのメールでのつながりが、この作品を思い出に残る作品にしています。」
スタッフ・キャスト
監督:森田芳光
脚本:森田芳光
製作:鈴木光
撮影:青木勝彦、三沢和子
編集:田中慎二
音楽:野力奏一、佐橋俊彦
美術:小澤秀高
キャスト:
藤間美津江(ほし):深津絵里
速見昇(ハル):内野聖陽
藤間由花(ローズ):戸田菜穂
山上博幸:宮沢和史
戸部正午:竹下宏太郎
(ハル)の元恋人:山崎直子
(ローズ)の婚約者:鶴久政治
スーパーの店長:潮哲也
(ほし)の父:平泉成
映画評論家・メディア評
受賞歴
第20回日本アカデミー賞(1997)
脚本賞:森田芳光(ノミネート)
主演女優賞:深津絵里(ノミネート)
新人俳優賞:内野聖陽(ノミネート)
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