怪物(2023 日本)

2020年代
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解説・ストーリー

2023年3月に他界した坂本龍一楽曲の遺作ともなった本作は、是枝監督へ「全部を引き受ける体力はもう残ってないけど、観させて頂いたらとても面白くて、音楽のイメージが何曲か浮かんでいるので形にします。気に入ったら使って下さい」と手紙を送り、その後2曲の新曲と一緒に「すでに私が発表している楽曲から自由に使って頂いて構いません」というメッセージを映画の製作陣へ送ったという逸話が残っている。

是枝は脚本家と組むならとの質問には必ず坂元と即答するほど大ファンであり、坂元も是枝について「憧れの存在であり、大好きな映画監督。脚本家としての是枝さんも尊敬している」と公言するなど相思相愛のコンビで難しい題材を傑作に仕上げている。

湖のある郊外の町。息子思いのシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして子どもたちが平穏な日常を送っている中、学校でケンカが起きる。

子ども同士のケンカであったが、なぜか当人たちの主張は食い違いをみせて、次第に社会やメディアまでも巻き込んだ一大事へ発展していく。そしてある嵐の朝に、子どもたちは姿を消してしまう。登場人物それぞれの視線から「怪物」探しの果てに訪れる結末…。

「怪物」は一連の出来事を複数の当事者の視点から語り直す手法が採用されていて、登場人物の隠された関係や事実が徐々に明かされていく。戸惑いや悲しみの感情が複雑に絡み合ったその情景には唖然とする。怪物の影はきっと誰の中にもある。

豪華実力派キャストがそろい「怪物」とは何かを好演する。見事2023年・第76回カンヌ国際映画祭にて脚本賞を受賞。2023年を代表する邦画の傑作となった。

U-NEXT

観客レビュー

⭐⭐⭐⭐⭐

タイトルに引っ張られると怪物探しをしてしまいそうですが、登場人物それぞれを多面的に深く見せることで「怪物なんていない」という逆のメッセージがあったように思えます。噓、暴力、犯罪…残酷な世界では、普通に生きようとしても見方によって人間ではない「怪物」に誰しもがなってしまう。そういうことではないのかと。

⭐⭐⭐⭐⭐

母親の視点、担任教師の視点、子ども二人の視点から真実を分かったつもりになっている。でも、校長の視点、教頭の視点、一年生の時の担任教師の視点、猫の死骸を見つけた女の子の視点を加えれば、真実は別の様相を呈してくるかも。

⭐⭐⭐⭐⭐
凄く観たくて待ち遠しかった作品。でもあまり期待し過ぎないように極力余計な情報は避けてました。結論から言うと強烈な衝撃と感動で胸が熱くなりました。田中裕子の演技が天才過ぎて言葉にならない。もう一度じっくり色々な角度から観たい。

 

スタッフ・キャスト

監督:是枝裕和
脚本:坂元裕二
音楽:坂本龍一
製作総指揮:臼井央
撮影:近藤龍人

キャスト:

麦野早織:安藤サクラ
保利道敏:永山瑛太
麦野湊:黒川想矢
星川依里:柊木陽太
鈴村広奈:高畑充希
正田文昭:角田晃広
星川清高:中村獅童
伏見真木子:田中裕子

受賞歴

第76回カンヌ国際映画祭(2023)
コンペティション部門
脚本賞:坂元裕二

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